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ニュース - 壁紙WhO

イベントレポート / まちを知る、つくる、つなぐ「かみしほろ デザインワークショップ 2025」

2025.08.05
Journal

北海道上士幌町での滞在を通じて町の魅力を吸収し、壁紙のデザインを制作するイベント「まちを知る、つくる、つなぐ “かみしほろ デザインワークショップ ” 2025」をWhOと上士幌町、一般社団法人ねづくの3者共同で開催。

前回開催した2023年夏とは対象的に、2025年1月29日〜2月2日の冬に開催となった今回。景色は違った表情を見せながらも、暖冬とのことで町は雪解けが進んでいました。それでも肌に触れる冷たい空気は気持ちよく、幸いにも連日晴天に恵まれ、日照の明るさと澄んだ遠景が印象的な5日間でした。

 

今回も全国各地から活動領域も年齢もさまざまなクリエイターが集まり、計8名が参加。町の方の話を聞いたり、代表的な自然スポットの探索や、特色である熱気球に乗る体験をしたり、前回とは違った季節の中、五感で町を体感いただきました。

 

DAY1

 

真っ青な空と白の地平線が広がる”上士幌町らしさ”を感じる冬の晴天が広がる中、北海道内外含めて全国各地からクリエイターが集まりました。

 

まずは「上士幌町生涯学習センターわっか」にて、オリエンテーションを実施。それぞれの自己紹介から始まり、企画の説明や、ゲスト審査員のgraf代表 服部滋樹さんによるデザインにおける「リサーチ」の手法についてリモートでレクチャーいただきます。

その後も、同じく審査員であり、町内にお住まいのデザイナー、ワンズプロダクツ瀬野航さん・祥子さんからは上士幌町に移住した経緯や、デザインで心掛けていること、“かみしほろらしさ”についてなど。そして、上士幌生まれ・上士幌育ちの菅原博治さんからは、地域の歴史・文化について限られた人しか知らない貴重な話もしていただけました。

お昼を食べながらたくさんの情報をインプットした後は、日本初の完全無人となる”レベル4”運行が話題となった自動運転バスの乗車体験へ向かいます。

出迎えてくれた最新のAI車掌の受け答えも楽しみながら、今後ワークショップの展示をおこなう「まちのギャラリーhumi」と隣接するスマートストア「かみしほろマルシェ」へ移動し、見学しました。

情報が盛り沢山となった初日も西日が差し込む夕刻に。これから4泊5日間、クリエイターのみなさんが共同で生活しながら滞在する施設「にっぽうの家」にチェックインします。しばし休憩を挟んだ後は夕食を兼ねて上士幌町の名店「みどり鮨」へ。お互いの紹介も挟みながら和気あいあいと会話を楽しみ、親睦を深めました。

 

 

DAY2

 

2日目は午前中から、町の中心部から車で30分ほど離れたぬかびらエリアに向かい、ひがし大雪自然館学芸員の乙幡さんにガイドをいただき糠平湖周辺の散策へ。

葉が抜け落ちた木々の間を抜けていきながら、植生や動物の話など色々教えてくれる乙幡さん。どんどん進んでいきます。

 

そして木々を抜けると一面広大な銀世界が―。奥の方は夏は湖面になっている場所です。

今回は暖冬の影響か氷が溶け始めイベント数日前に湖上が立ち入り禁止になってしまいましたが、湖上ではない安全な範囲で特別に散策させていただきました。

それでも一面深い雪に覆われた大地や見たことのない分厚い氷を目の前に、地元ではこんな景色は見れないと思い思いに散策するクリエイターさんたち。

つるつると滑る坂道を必死に上ったり、足を取られながら一生懸命歩いたり。自然の力強さを感じ、雪を全身で満喫していました。

糠平湖特有のアイスバブルと呼ばれる現象も確認できました。

 

その後はひがし大雪自然館に戻り、館内のガイドツアーも。

 

昼食後は温泉街のお土産屋さんを巡り、糠平から市街地に移動して廃校を活用したインキューベーション施設「上士幌イノベーションサイト」の見学へ。共有スペースに施工された前回のグランプリ作品もご覧いただきました。

 

午後は各々の自由時間。これまでのインプットからデザインの方向性を固めていきます。

夜はにっぽうの家でみんなで夕食をつくったり、参加者同士が楽しそうに過ごしている話を聞き、企画側として嬉しい気持ちになりました。

 

 

DAY3

 

当初2日目に予定していたものの、天候の関係で中止となった熱気球体験ですが、この日は天候に恵まれ、早朝から実施できることに。

 

真冬の上士幌町は最高気温が氷点下。凍てつくような寒さの中、カイロで温めながら搭乗の準備を進めます。

ゆっくりと上昇しながら、いよいよ大空へ。頭上にある装置が大きな音を立てて熱を送り込み、寒さも和らいだ気がします。

 

上空は視界を遮るものはなく、朝の澄んだ空気と雲の狭間から見える太陽が一日の始まりを演出。

ふわふわと浮かぶ気球は静かに上下に動き、不思議な乗り心地です。

 

太陽を背に向けて反対側は、道の駅「かみしほろ」。遠方にはほんのり雪化粧の大雪山が並びます。

景色を楽しんで、束の間の空中遊泳もあっという間に終わりです。

 

搭乗後はお片付け。空気を抜く途中に熱気球の中にも入らせてもらいました。

気球の中の空気を抜く作業は思いのほか力作業で、みんなで協力してコンパクトに折り畳んでいきます。

 

体験を終えた後はにっぽうの家に戻り、事務局と各々のアイディアの方向性を確認。もう少しインプットしたい方はドライブに行ったり、図書館で資料をみたり、制作に入る方はにっぽうの家の部屋に篭って作業をしたり、ギャラリーhumiで日付が変わるまで作業する方も。各々の時間を過ごします。

 

 

DAY4

 

この日はいよいよ最終プレゼンテーション。開始15:00の直前まで各自制作やプレゼンテーション資料の作成など集中して手を進めます。

今回は町の人はもちろん、町外の方もどなたでも自由にご覧いただけるよう一般公開としました。

会場となる上士幌町生涯学習センター「わっか」に少しずつ人が集まってきます。

そしてプレゼンテーションがスタート。

4日間という短い期間の中で、積雪、足跡、デジタル、のぞく、白樺、光、気球、風、歴史…など、滞在中に感じた”かみしほろ”を様々な視点で切り取ってデザインとして表現いただきました。

 

また、公開プレゼンテーションにお越しいただいた方からのデザインについての感想や気がついた点などを記載したコメントシートを、終了後にクリエイターのみなさんへ直接お渡し。クリエイターさん達はその後しっかり読み込んでいらっしゃいました。

 

審査では、みなさんそれぞれに表現の仕方に個性があり、プロセスにも創意工夫が凝らされており、審査員の中でも意見が分かれる中、なんとかグランプリを決定させていただきました。結果発表は講評と併せて明日に持ち越しです。

 

その後の打ち上げでは、夕食に上士幌町のブランド牛「ナイタイ和牛」を使用したビーフシチューと、町内の須田農場さんで育てている、じゃがいも・寒締めほうれんそう・さつまいもを使ったサラダを食べました。

 

滞在中の話やたわいもない話で終始盛り上がっており、クリエイターさんのリラックスした表情が印象的でした。中には前日ほとんど寝られなかったという方も。

 

最後まで真剣に取り組んでいただけて嬉しい気持ちと感謝と共に…みなさん本当にお疲れ様でした!

 

 

DAY5

 

 

あっという間のように過ぎていったワークショップも本日が最終日。昨日と同じ会場で結果発表です。

 

GRAND PRIX – “Winter dancing”

《CREATOR : 福岡未花 / デザイナー 》

 

グランプリ作品は、デザイナー 福岡未花(ふくおか みか)さんの「Winter dancing」に決定しました。ワークショップ参加当時は都内の美術大学でテキスタイルデザインを学ぶ学生さんでした。受賞作品は今後建設予定の上士幌町新役場の壁面に施工予定となっています。

雪の輝き、氷に差し込む光、澄んだ空気、白樺の木々から差し込む光など町で出会ったさまざまな「キラキラ」を感じたまま直感的に描き、デジタルで再構成した作品。自身が冬の上士幌町で心を揺さぶられた瞬間を素直に表現しています。

審査員の服部滋樹さんからは、「身体の感度をそのままに吸収する、ということがクリエイターのみなさまだと思いますが、インプットしたものをアウトプットをする、自分たちがやっている流れの中で、素直な表現をされていた。頭で考えるものではなく、感じるものだと思うので、目一杯身体を使って表現してくれたことがポイントでした。氷のなかに光が差し込んでいてキラキラしていた、というのはよくよくみないとわからないこと。氷を意欲を持って観察していたことがよかったのではないでしょうか。」と評価。

 

同じく審査員のワンズプロダクツさんからは「美しさや色の使い方、光、寒い季節、木、かみしほろを感じます。世界観がとても素敵だと思いました。見て一目惚れしてしまいました。この後の展開を考えて、町の人たちがみた時に、明るい気持ちになったりかみしほろっていいなって思えたらよいな、という基準で決めさせていただきました。」とコメントいただきました。

土地の歴史が現代の土台になっていること、そしてクリエイティブの力でその痕跡を未来に繋いでいくことの大切さについて服部さんからの総評があり、最後は感謝の言葉で締めくくり、短くも充実したワークショップが終了しました。

 

 

イベントを終えて

 

2回目の実施となった「かみしほろ デザインワークショップ」。前回とは全く異なる町の景色の中での開催となりましたが、クリエイターさんの作品に向き合う真剣な姿勢は共通しており、お互いを尊重する姿も印象的でした。そして、町の方達も私達含めて温かく迎えてくださり、内と外を感じさせず自然に過ごした5日間でした。

 

その後は、今回のイベントを振り返り、制作のプロセスを追う「かみしほろデザイン展」を2025年3月19日〜23日、まちのギャラリーhumiで開催しました。

会場では、完成したデザインだけでなく、原画やスケッチ、試行錯誤のプロセスまで丁寧に展示。また、グランプリ受賞者の福岡未花さん企画のワークショップも開催。来場者の皆さんに、上士幌の冬の魅力を再発見していただけるような空間になりました。

一角には2023年の夏開催時にグランプリを受賞したテキスタイルデザイナー、徐 笠さんの作品をモチーフに3種類のグッズも紹介。

今回参加されたクリエイターさんによる作品も町を象徴するデザインとしてグッズ展開を予定していますので、ぜひ引き続きご注目ください。

 

WhOではこれからも上士幌町との取り組みを継続していき、今後も地域の魅力をクリエイティブの力で体現しながら、新しい表現を模索していきたいと考えています。

 

また、今回参加いただいたクリエイターさんのデザインは全てWhOでラインナップしております。

それぞれの作風と個性が紡ぎだす“かみしほろ”をぜひご覧ください。

 

 

COLLABORATIONS – KAMISHIHORO

 

 

 

Photo by Kiyota Chihiro

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